小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)その2:これからの時代に求められる資質・能力とは

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今後の社会で活躍できる人材を育てるためには、「プログラミング教育」が重要なキーワードであると言われて久しい教育の世界。行政では、これに対してどのような議論がされているのでしょうか?文部科学省は、平成28年6月16日に「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」を行いました。うさぎノート通信では、その内容を簡単にまとめ、記事にまとめてお届けします。今回は、「2.これからの時代に求められる資質・能力」についてのご説明です。

目次

予測困難な時代の中で、子どもたちに求められるのは?

将来の予測が困難な時代の中で子どもたちに求められるのは、これまでにない全く新しい力ではありません。大事なのは、今までも重視されてきた読解力や論理的・創造的思考力、問題解決能力、人間性などの力を、加速度的に変化する社会の中での意義を改めて捉え直し、しっかりと発揮できることでしょう。

特に、情報化の進展という社会的な変化の中では、以下のような資質や能力が重要になると考えられます。
こうした力の育成を教育課程全体を通じて実現することが強く求められています。

(1)情報を読み解く

複雑な情報を読み解くために必要な読解力は、時代を超えて常に重要であり、これからの時代においても変わることはありません。情報化が進展する社会において求められる情報活用能力(※)の基盤となるのも、こうした読解力です。
※情報活用能力…世の中のさまざまな事象を情報とその結びつきとして把握し、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質や能力のこと

しかし、情報化が進展し身近にさまざまな情報が氾濫する社会の中で、ますます高まる読解力の重要性とは反対に、視覚的な情報と言葉との結びつきが希薄になり、知覚した情報の意味を吟味して読み解いたりする機会が少なくなっているとの指摘もあります。実際、子供たちが教科書の文章を読み解けていないのでないかとの問題提起もされており、全ての学習の基盤となる言語能力の育成を重視することが求められています。

中央教育審議会では、言語能力を構成する「テクスト(情報)を理解するための力」や「文章や発話により表現するための力」の要素を専門的に整理した上で、下記項目が発達の段階に即して系統的に育成されるよう、小・中・高等学校を見通して教育内容の充実を図ることが検討されています。
・国語教育などにおいて、語彙を豊かにすること。
・情報と情報の関係性を論理的に捉えるなど、情報を多角的・多面的に精査し、構造化する力。

プログラミング教育を含む全ての教育の前提として、こうした言語能力の育成に向けた国語教育等の改善・充実を図っていくことは不可欠なのです。

(2)情報技術を手段として使いこなしながら、論理的・創造的に思考して課題を発見・解決し、新たな価値を創造する

ますます身近となる情報技術を効果的に活用しながら、複雑な文脈の中から読み解いた情報を基に論理的・創造的に考えること。解決すべき課題や解決の方向性を自ら見出し、多様な他者と協働して新たな価値を創造していく力。これが、今後の時代を生きていく子どもたちには求められます。ここで言う「創造」とは、グローバルな規模でのイノベーションなどのような大規模なものに限らず、地域課題や身近な生活上の課題を自分なりに解決し、自他の人生や生活を豊かなものとしていくなどの工夫も含むものです。

子どもたちが情報技術を効果的に活用しながら論理的・創造的に思考し、課題を発見・解決していくためには、コンピュータの働きを理解しながら、自らの問題解決にどのように活用できるかをイメージし、意図する処理がどのようにすればコンピュータに伝えられるか、さらに、コンピュータを介してどのように現実世界に働きかけることができるのかを考えることが重要になります。

そのためには、自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つひとつの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく「プログラミング的思考」が必要になるのです。

こうした「プログラミング的思考」は、急速な技術革新の中でプログラミングや情報技術の在り方がどのように変化していっても、普遍的に求められる力でしょう。また、特定のコーディングを学ぶのではなく、「プログラミング的思考」を身に付けることは、情報技術が人間の生活にますます身近なものとなる中で、それらのサービスを受け身で享受するだけではなく、その働きを理解して、自分が設定した目的のために使いこなし、よりよい人生や社会づくりに生かしていくために必要です。言い換えれば、「プログラミング的思考」は、プログラミングに携わる職業を目指す子どもたちに限らず、どのような進路を選択したとしても、これからの時代において共通に求められる力だと言えるのです。

また、「プログラミング的思考」には、各教科で育まれる論理的・創造的な思考力が大きく関係しています。各教科で育む思考力を基盤としながら「プログラミング的思考」が育まれ、「プログラミング的思考」の育成により各教科における思考の論理性も明確となっていくといった関係を考え、アナログ感覚を大事にしていくことの重要性も踏まえながら、教育課程全体での位置付けを考えていく必要があります。

(3)感性を働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことを生かそうとする

人間に備わる感性は、現実の物事を捉えながら、それを超えて想像を膨らませたり、相手の感情や考えに思いを馳せたり、未来の社会や人生の在り方について思いを巡らせたり、まだ存在しないものを作り出すために創造的に考えたりすることができます。こうした人間ならではの感性を働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考えること、学んだことをそうした人生や社会の在り方に生かそうとすることは、私たちが人間らしく生きていくために重要な営みです。それと同時に、社会や産業の構造が変化し成熟社会に向かう中で、社会が求める人材像にも合致しています。

現在、中央教育審議会では、資質・能力の三つの柱
(1)何を理解しているか、何ができるか(知識・技能)
(2)理解していること、できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力)
(3)どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)
が重要であるとの議論がされており、知識・技能や思考力のみならず、「学びに向かう力、人間性等」についても重視し、教育課程全体の中でバランス良く育んでいくことが期待されています。

【参考資料】
小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)

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