小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)その1:いわゆる「第4次産業革命」は教育に何をもたらすのか

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今後の社会で活躍できる人材を育てるためには、「プログラミング教育」が重要なキーワードであると言われて久しい教育の世界。行政では、これに対してどのような議論がされているのでしょうか?文部科学省は、平成28年6月16日に「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」を行いました。うさぎノート通信では、その内容を簡単にまとめ、記事にまとめてお届けします。今回は、「1.いわゆる「第4次産業革命」は教育に何をもたらすのか」についてのご説明です。

目次

人工知能の発達がもたらす豊かさと危機感

最近では「第4次産業革命」ともいわれれる人工知能がさまざまな判断を行ったり、身近な物の働きがインターネットによって最適化されたりする時代の到来が、今後の社会の在り方を大きく変えていくと予測されています。こうした変化は、現代の社会が抱えるさまざまな課題を解決し、新たな価値の創造を活性化するものであり、私たちの生活に便利さや豊かさをもたらすことが期待されています。

その一方で、「人工知能の進化により人間が活躍できる職業はなくなるのではないか」、「現在、学校で教えていることは時代が変化したら通用しなくなるのではないか」といった不安の声も上がっています。そんな中で教育には、激しい変化によって将来の予測が困難であっても、子どもたちが自信を持って自分の人生を切り拓き、よりよい社会を創り出していくために必要な資質や能力をしっかりと育んでいくことが求められています。

人工知能にできない能力を育てる教育とは?

学校教育が目指す子どもたちの姿と社会が求める人材の関係については、長年議論が続けられてきました。社会や産業の構造が変化していく中で私たちに求められるのは、定められた手続きを効率的にこなすだけでなく、自分なりに試行錯誤しながら、新たな価値を生み出していくこと。そのためには生きて働く知識を含む、これからの時代に求められる資質や能力を学校教育で育成していくことが重要です。そして今こそ、学校と社会とがこれを共通の認識として持つことができる機会なのです。

これからの時代に求められる資質や能力の育成は、学校教育が長年目指してきたことでもあります。現在、中央教育審議会においては、教育課程がどのような力の育成を目指しているのかを可視化し、それを社会と共有し連携・協働しながら育成していくための「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた検討が進められています。

あらゆる領域に影響する社会的な「情報化」が、教育にどのような効果や影響をもたらすのか。教育はそうした変化をどのように受け止め、未来の創り手となる子どもたちに何を準備しなければいけないのか。これらを踏まえながら、新しい教育課程の在り方が議論されていくことが求められています。

「学ぶ」ことの意義と、これからの時代に求められる力の再確認

近年の人工知能は、人間が物事を認識して理解していく学習の過程を模した「深層学習」によって飛躍的に進化したと言われています。人工知能が大量のデータから共通する特徴を自ら見いだして概念的なものを獲得し、それを未知のデータにも当てはめていくという過程は、人間がさまざまな概念を獲得し物事を理解していく学習過程に似ているとも考えられます。

このように、人工知能が与えられた目的の中での処理を行っている一方で、人間は感性を豊かに働かせながら、「どのような未来を創っていくのか」、「どのように社会や人生をより良いものにしていくのか」という目的を自ら考え出すことができます。人工知能とは異なり、多様な物事が複雑に入り交じった環境の中でも、場面や状況を理解して自ら目的を設定し、それに応じて必要な情報を見いだし、情報を基に深く理解して自分の考えをまとめたり、相手にふさわしい表現を工夫したり、答えのない課題に対して、他者と協働しながら目的に応じた納得解を見いだしたりすることができることが人間の強みです。

今後の教育の在り方を議論するには、私たちが物事を学ぶ学習過程の重要性を改めて認識しながら、子どもたちが人工知能には決してできない能力を発揮し、自信を持って未来を創り出していくために必要な力を伸ばしていくことが求められます。またその過程において、私たちの生活にますます身近なものとなっている情報技術を受け身で捉えるのではなく、手段として効果的に活用していくことも同様に求められるでしょう。

現在、中央教育審議会では、子どもたちが学校で「何を学ぶのか」に加えて、それを「どのように学ぶのか」という学習過程の在り方。またその成果として「何ができるようになるのか」という資質や能力の在り方が総合的に議論されています。
そこでは、各教科の学びを通じて身に付く物事の捉え方や考え方の枠組みとは何かを明らかにし、それを学びの中で活用した「主体的・対話的で深い学び」を実現するアクティブ・ラーニングの視点を位置付けること。そうした学びを通じて、生きて働くための知識や技能の習得や、未知の状況にも対応できる思考力・判断力等の育成、学びを人生や社会に活かそうとする学びに向かう力につなげていく改革の方向性が、これからの時代に求められる教育の在り方として極めて重要だと語られています。

「次世代の学校」の在り方

情報技術の進展は、これからの時代に求められる教育の実現を大きく後押しすることが期待されています。そこで、ICTが持つ特性や強みとしては、以下のような点が挙げられます。

(1)多様で大量の情報を収集、整理・分析、まとめて表現することなどができ、カスタマイズが容易であること(観察・実験したデータなどを入力し、図やグラフ等を作成することを試行錯誤しながら繰り返し行ったり、発表内容を効果的にまとめて共有したり、個々の子供の学習ニーズに応じた学習内容を組み立てたりできること)

(2)時間や空間を問わずに、音声・画像・データ等を蓄積・送受信できるという時間的・空間的制約を超えること(距離や時間を問わずに児童生徒の思考の過程や結果を可視化したり、学習過程を記録したりできること)

(3)距離に関わりなく相互に情報の発信・受信のやりとりができるという、双方向性を有すること(教室やグループでの大勢の考えを距離を問わずに瞬時に共有したり交流したりできること)

ICTを活かしつつ、「次世代の学校」を実現するための議論を

こうしたICTの特性や強みを学校教育の中で効果的に生かすことが、「主体的・対話的で深い学び」の実現や、個々の能力や特性に応じた学びの実現、離島や過疎地等の地理的環境に左右されない教育の質の確保に大きく貢献することが期待されています。また、効果的な学習評価の実現や校務環境の改善等などにも、ICTの役割は期待されています。

とはいえ、ICTの導入によって全ての教育課題に道筋がつくわけではありません。実験・観察などを通して実際に体験することや、直接的な交流の重要性なども踏まえ、子どもたちに必要な学びをデザインする中でICTを効果的に活用し、学びを価値あるものとしていく教員の役割は、これまで以上に重要となってきます。教員の授業力の向上や学校の機能強化に資するICT環境の在り方を念頭に置きながら、アナログかデジタルかを対立的に捉えずに、「次世代の学校」にふさわしい環境整備と新しい教育課程の在り方を併せて議論していくことが求められているのです。

【参考資料】
小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)

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