子どものやる気を引き出す教育プログラムのひみつ 名物先生「ぬまっち」(後編)

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子どものやる気を引き出す「ぬまっち」こと先生のインタビュー後編です。前編では、沼田先生の創造溢れるアイディアによる、子どものやる気を引き出すプログラムをご紹介。後編のこちらでは、沼田先生独自のクラス運営術や、ユニークな教育方法ながらも保護者の方々との信頼関係を築いていく方法にフォーカスします。教職員ならずとも、ビジネスの現場でも参考になりそうです。

目次

学校よりも企業に近い?沼田先生のクラス運営術

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    うさぎ

    前編では、沼田先生の斬新な授業の魅力についてお伺いしました。後編では、それに伴った沼田先生の活動について伺いたいと思います!まずはクラス運営のポイントについて教えてください。

  • numata

    沼田先生

    僕のクラスづくりは、言ってしまえば一般企業の運営方法に近いと思います。代表的な取り組みは「プロジェクト制」でしょうか。子どもたちの中で「これやってみたい」と話が上がった内容をプロジェクトとして立ち上げ、達成に向けて協力します。どのプロジェクトに属すかは子どもたちの自由で、掛け持ちもOKなんです。

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    うさぎ

    「プロジェクト制」のことについては前編の記事でも少し触れさせていただきましたが、過去には具体的にどのような取り組みをされてきたのでしょうか?

  • numata

    沼田先生

    昨年卒業させたクラスでは、「みんなで帝国ホテルでご飯を食べるために、賞金を稼ごう」というのが全体の目標でした。でも、そのためには作文コンテストに応募して賞をとったりしなければいけないので、子どもたち自身の努力が必要なんです。その中で「これやりたい」と話が上がったものを、プロジェクトとして立ち上げ、その内容を紙に書いて教室に貼り、達成できたものには、飾り花をつけて壁に掲示していました。

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    うさぎ

    クラスとしての大きな目標があるからこそ、一人ひとりがそれぞれの目標に向かって努力できる仕組みができているんですね。実際に帝国ホテルでご飯を食べるという目標は達成できたのですか?

  • numata

    沼田先生

    はい。実は子どもたちが頑張ったので、目標金額よりも多くの賞金を集めることができたんです。それで、帝国ホテルで豪華なご馳走を堪能してから、帰りはクラス全員でリムジンに乗りました。それでもまだお金が余ったくらいです。何よりも、子どもたちが成長する過程において「小学校の時に、頑張った結果として一流ホテルで食事ができた。」そんな貴重な思い出を一緒に作ることができてよかったなと思っています。前編でもお話ししたのですが、学校生活の中で心に残る、人に自慢できるような「いつでもあけられるタイムカプセル」になったと思います。

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    うさぎ

    プロジェクトを子どもたち自身で立ち上げて、実際に結果を出すことができた経験は、成功体験として大人になっても貴重な思い出になりますよね。では、子どもたちそういったことに意欲的に挑戦させる秘訣はありますか?

  • numata

    沼田先生

    子どもたちが「これやってみたい」ということに関しては、基本的には好きに取り組ませるスタンスでいます。ただ、子どもだけの視点だと、どうしても可能性の幅が狭まってしまうこともあるので、大人の広い見方から「じゃあ、もっとこうしたらいいんじゃない?」とアドバイスすることもありますね。

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    うさぎ

    子どもたちがやりたいことだからこそ、先生ならではのアドバイスをもらえると、視野が広がってより成長できそうですよね。

  • numata

    沼田先生

    一般企業でも、プロジェクトが立ち上がって売り上げ目標を達成したら、ホテルで祝賀会をしたりしますよね。考え方はそれと同じなんです。また、クラスの子どもたち一人ひとりが「どこで輝けるか」にもいつも気を配っているのですが、これも企業ではよく行われていることですよね。それぞれの適職に合わせて配属をしている感覚と似ていると思います。僕のクラスのプロジェクト制や適材適所の役割分担をするクラス運営が「ユニークだ」と受け取られることが多いのは、教育の分野でこのアイディアを取り入れているからという理由なんじゃないでしょうか?

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「ユニーク」な授業でも保護者が安心できる関係性づくりとは?

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    うさぎ

    沼田先生のクラス運営が、子どものために深く考えられた上で行われているものだということが改めてわかりました!でも、一風変わった授業をしていると、保護者の方々から理解を得るのに苦労したりしないのでしょうか?

  • numata

    沼田先生

    新しく担任を持った時の最初の保護者懇談会で、まず僕のクラスではどんな取り組みをする予定なのかを、学級通信にして保護者の皆さんにしっかりと伝えます。例えば、漢字テストで間違えると「間違い直し」を1週間以内に提出してもらうのですが、期日を守れずにそのままにしていると、地獄の大量模写がペナルティとしてあるんです(笑)これは本当に単なるペナルティで、子どもたちが宿題をやりさえすれば課されないことなので、「この最終局面まで来てしまったら子どもには何の成長もないので、そうならないように見てあげてください。」と保護者の方々にあらかじめ伝えています。それでも「地獄の漢字練習」まで到達してしまう子どもはいるのですが……。保護者の方々はこれが単なるペナルティで、何の意味もないということを1学期の初めに聞いているので、協力してくれているようです。

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    うさぎ

    保護者の方々も事前に丁寧な説明をしてもらえれば、ユニークな教育方針でも安心して自分の子どもを任せられそうです。

  • numata

    沼田先生

    それから、やっぱり人として当たり前の対応をきちんと行うことが重要です。保護者の方にご指摘いただいた失敗は素直に謝ります。例えば、子どもたちの間でちょっとしたトラブルが起きて保護者から問い合わせがあったとします。自分が勘違いしていたら訂正しますし、正しく伝えられていないのであれば丁寧に説明します。真摯に保護者の方と向き合えば、納得してもらえることが多いんですよ。僕も保護者の方も、子どもを成長させたい気持ちは同じなので、何か不満が出てしまった時は必ずどこかに認識のズレがあるはずなんです。それをきちんと解決するように努めることが大事だと思います。

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先生に大事なのは、環境に合わせてアップデートする姿勢

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    うさぎ

    最後に沼田先生から、現場で働いている同業者の先生たちに伝えたいことはありますか?

  • numata

    沼田先生

    先生方は子どもたちを伸ばすために、さまざまな教育法やクラス運営などについて、研修や研究授業などからアイデアを得ていると思います。僕のやり方を参考にしてくださる方もありがたいことにたくさんいらっしゃるのですが、学校の方針や仕組みによって、同じように実行するのが難しいケースはもちろんあると思うんです。だから、全てをそのまま採用するのではなくて、「使えるな」と思った部分を、少しでも活用して頂ければ嬉しいです。

  • usagi_icon-1

    うさぎ

    どんなに効果があったとしても、各学校の教育方針や決まりごとによって、すべての先生が同じように教えることが良いとは限りませんよね。

  • numata

    沼田先生

    そうなんです。まず学校が私立か公立かで、先生の方針は大きく左右されます。それに、受け持つクラスの雰囲気や学校のある地域によっても差はあると思います。僕自身も、去年やってみて効果があったことが、今年のクラスの子どもたちにもそのまま活きるかといえば、必ずしもそうではないんです。その学校の環境や、子どもたちの特性に合わせ、常に最適な形に教育の方法を自ら学習してアップデートしていく姿勢が大切だと思ってます。

沼田先生のクラス運営の仕組みや保護者の方々との関係性づくりは、現場で働く多くの先生方にとっても参考になるでしょう。最適な方法をいつもアップデートし続けて、子どもたちやその保護者の方とも正面からしっかり向き合っていく沼田先生の姿勢に、みなさんが共感しているのですね。

沼田先生は書籍も出版されています!
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『子どもが伸びる「声かけ」の正体 (角川新書)』
沼田 晶弘

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