子どものやる気を引き出す教育プログラムのひみつ 名物先生「ぬまっち」(前編)

ぬまっち

子どもが意欲的に学び、成長できる環境を作るには、どうしたらいいんだろう?これは、多くの先生が一度はぶつかる壁なのではないでしょうか。そんな「先生の永遠の悩み」を払拭するような新しい授業を展開し、注目を浴びている小学校の先生がいます。
ぬまっちこと、沼田晶弘先生は「ダンシング掃除」や「掛け算九九のU2の称号付け」など、数々の斬新なプログラムで子どもたちが意欲的に頑張る環境を作りあげてきた先生です。その考え方の根底にあるのは、まるで子どもたちを最高の舞台で輝かせる演出家のように、創造性豊かな発想でした。
「なぜ、沼田先生のクラスの子どもたちはそんなにもいきいきしているんですか?」先生方の参考になるお話を入手するべく、うさぎノート通信でインタビューをさせていただきました!

目次

楽しいから自然と頑張れる。子どもの興味関心を惹く秘訣

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    うさぎ

    はじめまして。さっそくですが、沼田先生は斬新とも言える教育方法で業界では注目を集めていますよね。まずは今までの話題の活動について簡単にご説明いただけますか?

  • numata

    沼田先生

    以前からブログやtwitterで活動の発信を積極的に行ってきました。最近では、本を出したこともあって、メディアでも取り上げていただくことが多くなってきました。よく取材していただくのは「ダンシング掃除」です。

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    うさぎ

    ネーミングから興味をそそられますね!具体的にはどんな内容なのですか?

  • numata

    沼田先生

    まず掃除の時間に教室内でノリノリの音楽をかけます。あるシーンまで曲が進んだら、そこで全員が一斉に掃除の手を止めて、ダンスをしなければならないというルールです(笑)

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    うさぎ

    すごく楽しそう……。そもそもなぜこの「ダンシング掃除」を取り入れようと思ったのでしょうか?

  • numata

    沼田先生

    もともと掃除の時間に音楽をかけて、子どもたちが時間配分を考えて作業をするための習慣づけに活用していたんです。音楽は一曲の時間が定まっているので、時間の感覚を身につけるのに有効です。そんな中で「掃除中に踊ったら楽しいんじゃないかな」とふと思ったんです。そこで、一人で振り付けを練習して、子どもたちに教えてみたのがきっかけでした。

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    うさぎ

    掃除中に踊るなんて子どもたちも最初はきっと不思議に思いますよね。「ダンシング掃除」を定着させるのは大変ではなかったですか?

  • numata

    沼田先生

    当時担任していたのは2年生でした。低学年のうちは、比較的先生の指示を素直に聞く子が多いですよね。問題は高学年です。実は、その後に5、6年生を担任した時はそれほど浸透しなかったので、無理にやらせることはしませんでした。ですが、ここ最近「ダンシング掃除」が注目される様になった時に、担任をしていた高学年の子どもたちのうち3分の1が、たまたま先ほど話した2年生の時、ダンスを教えた子ども達だったんです。そこで、おもむろに掃除の時間に僕が突然踊りだしたら、恥ずかしがりながらも、つられてみんな踊りはじめました。そしたら、振り付けを知らない子どもたちも「え?踊る空気なの?」と次第に真似をしはじめて定着しました(笑)

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    うさぎ

    2年生の時に毎日していたことを身体が覚えていたんですね。やっぱり高学年になってくると特に、恥ずかしい気持ちが芽生えてくるものですよね……。

  • numata

    沼田先生

    そうですね。子どもたちが「先生恥ずかしいよ」とか「こんなことしてたら周りに馬鹿にされるよ」と言うので、「馬鹿にされたら勝ちだと思え」って伝えました。人は興味がない人のことを馬鹿にしたりしてこないでしょう?本当はみんな、掃除だって楽しくやりたい気持ちはあると思います。
    だんだん子どもたちも「ダンシング掃除」にプライドを持ち始めて、新しい曲を決めたり、自主的に振り付けを考えたりするようになりました。その子たちは卒業して、今は新しく3年生を担任しているのですが、彼らはその「初代」をリスペクトしていて、ノリノリで「ダンシング掃除」をしていますよ(笑)ただ、いくら楽しむことが大事とは言え、掃除がきちんとできていなければ意味がありません。子どもたちが踊っている間は掃除の作業が止まるのを活用して「ほうきはこうやって使うんだからな!ちりとりは一個持てば十分だろー」とか気づいた点をあれこれ大声で指示しています(笑)

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    うさぎ

    「ダンシング掃除」はしっかり定着しているんですね!他にも沼田先生の教育方法には、「掛け算九九を暗唱するのに2分切ったら『U2(under2minutes)』を名乗って良い」、「目標を共有するクラスメイト同士で『プロジェクト』を自由に立ち上げさせる」など、子どもが楽しみながら意欲的に学ぶためのさまざまな工夫がされていますよね。このようなプログラムを次々に生み出すために、大事にしていることはありますか?

  • numata

    沼田先生

    「みんなが楽しくて幸せならいい」というのが一番です。僕自身が子どもたちに「こうなってほしい」という具体的な目標を決めているわけではないんですよ。

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    うさぎ

    なるほど。それが子どものやる気を引き出す環境作りの秘訣なのでしょうか??

  • numata

    沼田先生

    子どもって、好きなことなら勝手に努力できるんですよね。大人だって、例えばカメラが好きだったら自発的にカメラのことを勉強しますよね。それと同じです。いかに楽しませるかがポイントで、九九を暗唱するときだって、『U2』という称号ほしさに子どもたちは夢中になって覚えようと努力していましたが、そうしているうちに無意識でものすごい時間の勉強をしているんです。

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子ども達には、いつでも開けることが出来るタイムカプセルを提供したい。

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    うさぎ

    楽しい授業が子どものモチベーションアップにつながることは、多くの先生が分かっていても、なかなか実践に落とし込めずに悩んでいると思うのですが、その点で何か秘訣はありますか?

  • numata

    沼田先生

    まず、自分のルールを押し付けないようにしています。先生という立場でも、必ずしも自分が一番正しいとは思っていません。例えば、「ここの◯◯が美味しいから食べてみて!ね?美味しいでしょ!」って無理矢理自分の好きな食べ物をおすすめしてくる人って困りません?味覚って人によって違うじゃないですか。だから、普段の授業の時も、子どもたちに「これどう思う?」と素直に問いかけることが多いです。そうすると、予想外の返事にこちらが「なるほど」と思うこともあるんです。失敗したときや間違っていたなと思った時も「ごめん」とすぐに謝ります。

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    うさぎ

    勉強には明確な答えがあるにしても、学校生活の中で「明確な正解がない」ことは多々ありますよね。子どもの見本であるべきだと感じている先生も多いと思いますが、沼田先生の考えは少し違うようですね。

  • numata

    沼田先生

    見本になりたいとは思っていないです。どちらかと言うと、憧れのような存在になりたいですね。子どもたちが大人になった時に、「へんな先生いたな」って話題にしてくれたら嬉しいです。それともう一つ、「あの時楽しかったな」という思い出を、ちゃんと学校生活の中で作ってあげたいんです。皆さん小学校の頃の思い出を振り返ると、教室の外でのやんちゃな思い出を楽しかったこととして最初に思い出しませんか?
    そうではなくて、授業とか、掃除とか、学校行事とか、皆で目的に向かって努力して、達成できたことを楽しい思い出として子どもの心に残してあげたいんです。

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    うさぎ

    楽しみながら頑張って皆で成果を出したことって、最高の思い出になりそうですね。

  • numata

    沼田先生

    子どもたちには「いつでも開けられるタイムカプセル」を提供したいと思って日々接しています。本物のタイムカプセルは掘り起こさないといけないし、せっかく大事な物なのに、いざ掘り起こしたらぼろぼろになっていたりするでしょ?でも、楽しかった思い出ならいつでも心に刻まれているし、汚れたりすることはないですよね。
    子どもたちによく言っていることがあるんです。「大人になって、最近楽しくないなと思ったら、何かが違っている。何かを変えないと行けないんだぞ。君たちは小学校時代にこれほど楽しく努力をすることができたんだから、大丈夫だ」って。

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    うさぎ

    たしかに、小学校時代にそうした成功体験ができていると、その後の人生も子どもにとって大きく変わりそうですね。沼田先生のクラスは、先生と子どもの距離がものすごく近いように感じます。他に、子どもとの関係性で心がけていることはありますか?

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あえて初めから完璧を求めないことで伸ばす、子どもの向上心の根。

  • numata

    沼田先生

    何事も、最初から完璧を求めないことです。「出る杭は打たれる、出ぬ杭は腐る」という言葉を大事にしています。まずは何事もやってみることが大事だと思うんです。やってみて、失敗したら改善していけばいいじゃん。という精神が根底にあります。子どもたちに対してもそんな風に接しています。
    子どもたちに定期的に作らせている学級新聞では、でき上がるまで僕からは一切口出しをしないことにしています。最後に「ここをこうすれば良かったなあ、惜しかったな」みたいにコメントをするのですが、その時に子どもたちは「あーそうかー」とちょっと悔しがったりして、だんだん改善していくんです。一年間そんなやりとりを続けていくと、最初に作った新聞と最後に作った新聞で、子どもの成長をものすごく感じられるんですよ。それを見て、感動のあまり涙する保護者の方も結構いらっしゃいます。

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    うさぎ

    あえて最初から細かく教えないことが、子どもの成長につながることもあるんですね。

  • numata

    沼田先生

    できなかったこと、失敗したことなどを後で「あの頃はこんなことしてたのか」と振り返るのって、楽しくないですか?できるようになればいいんだから、一人ひとりを他と比べるようなこともしません。

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    うさぎ

    なるほど、自分の成長を実感できると、さらにやる気につながっていきますもんね。沼田先生には、ご自身の今後の目標はありますか?

  • numata

    沼田先生

    はっきり言ってしまうと、「自分が将来こうなりたい」という目標はありません。ただ、教え方はどんどんアップデートしていかないといけないとは常に考えています。「ダンシング掃除」もその一つですが、その時に向き合っている子どもたちや、時代の流れに合わせたアレンジをしていくことは必須です。教育の現場にはこれからも立ち続けていきたいです。定年したら、教え子たちに毎日日替わりで奢ってもらうのが夢なんです(笑)

子どもとの関わり方や楽しませ方など、参考になる部分はあったでしょうか?
後編では、沼田先生流の保護者との関係作りなどについてご紹介します!

沼田先生は書籍も出版されています!
koekake
『子どもが伸びる「声かけ」の正体 (角川新書)』
沼田 晶弘

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