教育に科学的根拠に基づいた視点を – 『「学力」の経済学』に学ぶ教育論

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「これ!」といった明確な正解がない教育の世界。

そのため、先生は長年の経験から生徒との関わり方やベストな教え方を見つけ出しているケースが多数ありますよね。権威ある教育者の講演や勉強会には、多くの教育に関わる人たちが殺到します。

しかし、教育の現場は日々変化していきます。経済学のように、教育もデータ化されていればもっと合理化できるのに……。そんな先生方や保護者のみなさんの悩みを軽くしてくれる本が、慶応義塾大学准教授、中室牧子氏のベストセラー『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥウェンティワン)です。

「教育に科学的根拠(エビデンス)を」というテーマを掲げ、教育経済学の視点で、今まで日本では風説としてしか語られてこなかった教育方法について、実際に立証されたデータをもとにその真偽を追及している本書。

今回はその一部をご紹介します。

目次

「ご褒美」で子どもを伸ばすのはNGなの?

「テストでいい点を取ったらお小遣いをあげる」。これは保護者の方が子どもに対して言いがちな内容ですが、先生でも「クラスの平均点が上がったら◯◯しましょう!」なんてご褒美を考える場合もありますよね。

こんな風に物で釣って努力させるのは、生徒の本質的な成長にはつながらないという説が一般的でした。しかし、「何に対してご褒美を与えるか」によっては、効果的なことが証明されています。

それは、結果ではなく過程を評価対象にすること。例えば、「いい点を取る」ではなく「問題集を1ページ解く」に対してご褒美をあげることにします。このように「いい点を取る」ための具体的な方法を先生や保護者が呈示することが大切。それを頑張った結果が、成績アップにつながるのだから納得ですよね。

ゲームやテレビを禁止すれば勉強時間は本当に増える?

ゲームばかりしていたり、ずっとテレビを観ているという生徒も多いですが、それをやめさせたことで勉強時間が増えるわけではありません。

ゲームと勉強の因果関係には多くの研究がなされていますが、「ゲームそのものが子どもたちにもたらす負の因果効果は私たちが考えているほどには大きくない」という研究結果がほとんどだそうです。

また、「幼少期にテレビを観ていた子どもたちは学力が高い」と結論づけている研究もあるのだとか。

また、子どもが勉強に取り組む姿勢が変わらないのに、テレビやゲームの時間を制限したら、それに類似する他のこと(スマホをいじる、遊びに行くなど)に時間を費やすだけ。

1日1時間なら、ゲームも適度な息抜きになるという報告もあるので、禁止することが一概に良いとは言い切れないのが真実だそう。

「勉強しなさい」と言わずに勉強させるには?

勉強をしない生徒に対して、「しっかり勉強しなさい!」と言葉で注意するのは簡単なことです。これは、先生も保護者もよくやりがちな行為ですよね。

しかし、口で言ったところで、生徒が勉強するようになることはあまりなく、効果が低いとデータが出ています。それよりも大事なのは、先生や保護者自らが生徒に寄り添って、一緒に勉強に費やす時間や、手間の量を増やすことです。

言うだけでなく、自分から実際に行動に移させるための働きかけをすることが何よりも生徒のやる気を刺激する効果があるそうです。

経済や財政政策を決める際は、その正当性を証明するデータについて厳しく問う反面、教育政策となると、科学的な根拠を欠いた「識者」の主観的な意見がいまだに影響力を持っているのが日本の現状。

教育経済学の豊富な実験データを参考に、今一度、生徒にとって本当に効果的な教育のあり方を見直してみるのも良いかもしれません。