【番外編】恩師の態度から読み解く、生徒の将来を導くための心がけとは?

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かつて駿台予備校の数学の授業で人気を博し、NHKの教育番組にも出演していた、数学者の秋山仁先生。うさぎノート通信では、前編・後編に分けてインタビュー記事を掲載させていただきました。今回はその番外編です!秋山先生が、数学に一生を捧げる決意をした高校時代の先生の『発言や態度』にフォーカスします。高校時代の進路決定は、その生徒の人生を大きく左右する大事なことですよね。秋山先生のお話から、生徒の人生を切り拓くための、先生として心の持ち方のヒントを探してみましょう。

目次

理解が遅い生徒を決して責めない

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    秋山

    授業中に数学の先生が『今の分からなかった人は?』といった時に私は必ず手を挙げる生徒でした。
    それでもう一回説明してもらっても、まだ分からなかった。
    でも卒業後に、ある企画の対談で当時のその先生が『秋山くんは確かに理解が遅かったけれど、その頭脳は綿密にできていて、私の粗雑な説明では完璧に理解させることができなかった。彼は本質が理解できるまで、分かったということはありませんでしたが、物事を理解するというのは、そういうものだと思っています』と言ってくれたことが印象に残っています。すぐに分かる子だけが優秀ではない、という先生としての姿勢は素晴らしいと思ったし、すごくありがたかったです。

有名になってから、高校時代の恩師と対談をする機会のあった秋山先生。理解が遅かった当時の自分に対して、恩師が言ってくれた言葉が心に響いたと語ります。
大勢で学んでいれば、生徒の理解度に差が出てくるのはよくあること。しかし、成績が振るわない生徒を頭ごなしに否定してしまっては、その差はどんどん開いていくばかりです。

もしかすると、秋山先生の様に自分とは全く違う世界が生徒の頭の中に広がっている、なんてこともあるかもしれません。分からないことを素直に質問し、努力する生徒をしっかりと評価し、一緒に理解を深めていこうとする気持ちを、先生は大切にしたいですね。

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生徒が描きたい人生を一緒に考える、道標を示す

  • akiyama

    秋山

    進路を考えたときに、いつか自分の働きで何かを世に残したいと思ったんです。考えてみれば、お金を稼いでも死んでしまったら棺桶まで持っていけないし、名誉や地位も自分の身と一緒に消えてなくなってしまう。
    だから自分は後世に役立つ数学の定理を一つでも残したいと思って、数学者になることにしたんです。
    数学って、絶対に答えはひとつしかないんですよね。たとえ100万人が『この定理は間違いだ』と言ったって、しっかりした証明ができれば、それは何が何でも正しいんです。だから、それを成し遂げることに人生を捧げようと思いました。

秋山先生が数学の道に進むことを決意したのは、「何かを世に残したい」という人生においての自分の目指すべきところが見えていたから。
これこそ、当時の秋山先生に進路決定で迷いがなかった理由のようです。高校の先生には、進路に悩んでいる生徒と話をする機会も多くあると思います。

そのときには、どこの大学を選ぶかよりも先に、漠然としていても、その生徒が「どんな風に生きたいのか」を一緒に考えたり、人生の先輩として生徒を経験でフォロー出来るような知恵を話してあげてください。
必ずしも、それはスケールの大きいことでなくても構いません。「安定した収入があって、家族と穏やかに暮らしたい。」という想いの生徒がいたとしたら、安定した収入とはどれくらいなのか、どんな生活ができれば幸せなのか、その生活をするためには、どういう進路が合っているのか……と、次々に考えるべきことが生まれてきますよね。

これらを一つひとつ具体的に描いていくようにサポートすれば、漠然とした将来に悩んでいる生徒の大きな力になれることでしょう。

生徒の決めたことを応援する姿勢

  • akiyama

    秋山

    数学の先生が、授業の合間に教科書にはない数学のさまざまな面白い話題や問題、人物伝などを話して下さって、成績がいくら悪くなろうと私にとって数学は魅力的な存在であり続けました。その数学の先生が進路指導主任だったのですが、進路指導の際に私が『数学科に進学して数学者を目指します』と宣言したら腰を抜かしてましたよ(笑)。
    だけどそのとき、先生は『好きなものに挑戦する、そういう人生もいいかもしれないな。数学の道は生易しくないが、君が簡単に諦めずにやり続けると言うのなら、先生も陰ながら応援するよ。』と言って下さって。そのときから、ずっと数学と関わろうと決めたんです。

生徒が決めたことに対して、頭ごなしに反対するのではなく、意思を尊重することも大切です。やりたいことが決まっている生徒には、それを応援する気持ちを持つようにしましょう。

先生は、学校のイメージアップのために進学実績を気にかけてしまうこともあるかもしれません。しかし、人生の主役は、生徒自身。生徒が自ら悩み、決めたそのプロセスをまずは評価してあげることが大切です。
また、秋山先生の高校時代もそうであったように、学問の面白さで、生徒に自分がどんなことに興味があるのか?思考の幅を示してあげるような授業も先生は心がけたいものですね。

授業やテストに直接関係がなくても、生徒に学ぶ意味を伝えることや、異なる世界への扉を開いてあげることが、先生の一番の使命なのかもしれません。

いかがでしたか? 立派な数学者である秋山先生にも、高校時代に苦労して進路を切り拓いた過去があること、それを支えた先生の存在があったことが分かったかと思います。進路指導は先生の責任重大な役目。秋山先生の言葉から、生徒と向き合う自分自身の日頃の姿勢について、振り返ってみるのもいいかもしれません。

 前編はこちら数学者・元NHK人気講師の秋山仁先生に学ぶ教師の姿 前編