数学者・元NHK人気講師の秋山仁先生に学ぶ教師の姿 後編

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教育の分野で活躍する著名人にインタビュー。その人のこれまでと、今、教育について思うことを伺います。今回の主人公は、数学者であり元NHKの教育番組の人気講師、秋山仁先生です。後編では、秋山先生の思う「先生」のあり方について語っていただきます。

目次

「教師5者論」で再認識する先生の責任について

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    うさぎ

    まず、ご自身の学生時代の先生とのエピソードを教えてください。

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    秋山

    授業中に、先生が『今のわからなかった人は?』といったときに私は必ず手を挙げる生徒だったんですよ。それで先生がもう一回説明してくれても、まだ分からなかった。申し訳ないくらい何度も分かるまで手を挙げました。

    とある企画で、当時を振り返り高校時代の数学の先生と対談するというものがありました。
    その時に私の当時の先生は『秋山くんは確かに理解が遅かったけれど、その頭脳は綿密にできていて、私の粗雑な説明では完璧に理解させることができなかった。彼は本質を理解できるまで、分かったということは絶対にありませんでした。物事を理解するというのは、そういうものだと思っています』と言ってくれたのが印象に残っています。

    すぐにわかる子だけが必ずしも優秀ではない、という先生としての姿勢は大事だと思ったし、すごくありがたかったです。

    実際に今、教育に携わる先生方もそうであってほしいです。

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    うさぎ

    「先生」という仕事について、秋山先生の考えを教えてください。

  • akiyama

    秋山

    先生は、生徒にとって人生で最初に出会う家族以外の大人です。
    そんな重要な存在が、生徒に情熱を注ぐのか、勉強ができないからといって厄介者の一人として扱うのかで、その子の一生を左右するんです。
    ですので、先生という職業はとても難しく重要だと思っています。

    私は『教師5者論』という自論を掲げています。具体的に説明します。
    ・1つ目は『学者』。子どもに教える内容だとしても、先生は自らが勉強し続け、生徒にそれを還元しないといけない。
    ・2つ目は『医者』。生徒のそれぞれの特徴をとらえ、何が苦手なのかを把握して、早期に治療(克服)する必要がある。
    ・3つ目は『役者』。教壇に立ったら、生徒を魅了するためにその時々に応じてキャラクターを演じなければいけない。声に抑揚をつけることも大事だし、例えば歴史だったら実際にそれを見てきたようにその時代のことを語らなければならない。
    ・4つ目は『忍者』。生徒になんでもすぐ教えるのではなく、彼らが自ら気づくまでじっと待ち、耐え忍ばなければならない。
    ・5つ目は『易者』。その生徒には何が向いているのかを見抜き、将来につながる的確な助言を与えて導かなければならない。
    こんな風に考えると、子供の人生に与える先生の責任は重大だと気づくはずです。教育の現場に立つ先生方には、このことを強く意識してほしいです。

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人生の視野を広げるのは、先生の力量次第

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    うさぎ

    長い間教育の現場に携わり、現在の生徒について思うことはありますか?

  • akiyama

    秋山

    最近大学で教えていて思うのは、本当に今の子どもたちは素直だなあと。
    50年前に教えていた学生は麻雀とかビリヤードとかして遊んでばっかりで、授業なんかろくに出てなかったですからね(笑)。

    ところが今はみんな出席するし、寝たりおしゃべりしたりする人も少ない。
    だからといって今の子たちの方が成績が良いかというと、意外とそうでもないんです。

    多分、勉強に対する『姿勢』の問題で、昔は『勉強は自分でやるもの』と思っている学生が多かったのに対し、今は『教えてもらうもの』と思っている学生が多いんですよね。生徒から『出席とらないんですか?』なんて言われると拍子抜けしてしまいます(笑)。

    自分は何のために学ぶのかが見えていないというか、『親に言われたから大学に来ているのかな?』なんて思ってしまうこともありますね。この現状を変えるのも、先生の役目だとは思います。NHK時代も意識していたことですが、学問を楽しいと生徒に思わせることがまず大事なんです。楽しいと思えれば、生徒は自らすすんで勉強するようになりますからね。

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    うさぎ

    それでは、秋山先生にとって「教育」とはなんでしょうか?

  • akiyama

    秋山

    学ぶことは、人が人として生きていくために必要不可欠の行為。
    そして教育とは、子どもが生きていくための視野を広くするための手立てだと思っています。

    知らなかったことが分かることで、その生徒にとっての新しい可能性がどんどん見えてくる。それを最大限にする手助けをすることこそが、先生という存在の意味だと思います。

    一番大切なのは、『努力すれば、必ず何かを得られる』という事実を生徒に身を持って学ばせることです。それも、特定の方向だけにではなく、全方向に関心を伸ばしていく心がけが必要です。

    生徒の可能性を生かすも殺すも、先生の想いや実力次第ですから。しっかりと生徒と向き合っていってほしいですね。

人気講師として、数十年に渡り数多くの生徒に影響を与えてきた秋山先生のお話には重みがあります。生徒の可能性を握るのは、先生の熱意次第。先生方も、そうではない方々も「教育」という現場で秋山先生の言葉を心に留めて、今一度、生徒との向き合い方を振り返ってみてはいかがでしょうか。

 前編はこちら数学者・元NHK人気講師の秋山仁先生に学ぶ教師の姿 前編
番外編はこちら 【番外編】恩師の態度から読み解く、生徒の将来を導くための心がけとは?