日本語と英語のバランスが大事?日本学術会議の提言内容まとめ

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次期学習指導要領によると、平成30年より小学5年生からの英語の教科化が決定しています。しかし、この外国語学習の早期化についてはさまざまな議論が飛び交っています。研究者や科学者の集まりである日本学術会議は、平成28年11月に小中学校の英語教育について提言をまとめました。実用的な英語教育の曖昧さや、ことばを「道具」として捉える現在の英語教育を批判し、疑問を投げかけているのが特徴です。日本学術会議はこの提言で何を問題とし、どんな英語教育を良しとしているのでしょうか。

目次

実用的な英語は本当に必要不可欠なのか?

1989年、学習指導要領の改訂により読解中心の英語教育から実用重視の英語教育へと切り替わりました。グローバル人材を求める企業やそういった子どもを育てたい保護者にとって、国際共通語である英語でのコミュニケーション能力の育成はとても大切。しかし実際は日常的に英語を使う人は総人口のたった1%だといわれています。また、日本においては英語を使用する職場や環境が限定的。母語として英語を使用している人よりも、非母語として英語を使用している人の方が1.5~2倍もいるそうです。こうした現状から、実用的な英語能力とはどのような場面でどのような英語を使うのか、考えなおす必要があります。

母語の影響が避けられない外国語

日本人にとって、母語である日本語に関しては、知能が発達する5~6歳までに約3万時間にも及ぶインプットを受けます。これにより私たちは幼少期より日本語を話すことができるのですが、英語も母語と同じように早くから英語に触れればいいという訳ではありません。英語の習得は、母語である日本語の影響を多大に受けるためです。そのため、日本学術会議は英語だけを使用して行う英語の授業に対して批判的です。

単に英語に触れる時間を増やすよりも、日本語と英語のバランスを上手く取ることが大切。言葉の仕組みや働きに対する疑問や関心を育むことが先なのでは、といった意見もあります。

英語教育に対する新たな目標設定を

日本学術会議では、まず前提として、英語の習得には、英語によるコミュニケーション能力が一般に考えられるほど必要ではないと考えています。母語である日本語とは異なるアプローチ方法を考え、英語に接する機会や時間が限られていることを認識した上で、英語教育について計画を立てる必要があります。
また、外国語の習得には多くの時間や労力がかかることを理解し、実用的な英語教育を推進するのではなく、基礎的なスキルを修得する場として英語教育を推進することで、無理のない計画を立てることができるとしています。

言葉への疑問を育む英語教育

言葉を「道具」として捉え、児童・生徒に指導することは、せっかくの教育機会を逃してしまうことと同じだと提言ではまとめられています。言葉の仕組みや働きを固定化された文法に当てはめてしまうと、児童・生徒からの能動的な疑問が生まれにくくなってしまいます。英語の習得は生徒自らが能動的に言葉に向かうことにより達成できるものであって、英語教育はその手助けをする機会に過ぎません。児童・生徒の疑問に丁寧に答えることで、文の構造や日本語との文法的な違いなどを学ぶきっかけになります。この教育機会を大切にすることが、英語教育の第一歩であるといえます。

日本学術会議では、グローバル化における英語教育の在り方について、他とは違った見解を示しました。外国語は母語である日本語と学習環境が異なるため、英語による英語の授業を行ったところで、「習得は難しい」と断言しています。それよりも、言葉の仕組みに対する関心や疑問を高め「能動的に」学習することでしか外国語の習得はできないとしています。実用的な英語教育の提供ではなく、あくまでサポートとしての、基礎的な英語教育の提供を推進する日本学術会議での見解。この学術会議の提言を受け、英語教育は今後どのように展開していくのでしょうか。